GDPとは? | 経済の健康を測る指標

マクロ経済学
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皆さんはGDPという言葉を聞いたことがありますか?

ニュースなどでよく見聞きする言葉ではありますが、正しく何であるかを理解していますか?
単純にGDPが大きければ良いんじゃないの?という理解の人もいるかと思います。

しかし、ニュースをや社会情勢を正確に把握するにはGDPとは何であるのか、大きいとはどういうことを意味しているのか、正しく理解している必要があります。

そこで、今回はマクロ経済学を学ぶ中で最初に出てくる指標である「GDP」について考えていきましょう!

この記事を読むことで、「GDPとは何なのか」「どのように使われているのか」「GDPだけでは測ることができないことは何なのか」など、GDPを取り巻くあれこれを理解できるはずです!

僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。

GDPの概要

まずはGDPの概観を確認していき、その後どうやって算出するのかなど細かな各論を見ていきましょう。

GDPとはGross Domestic Productの略称で、「国内総生産」とも呼ばれる指標です。
国内でどれだけ生産されたのかという意味です。

小難しい言い方をすると「一定期間内に国内で出た最終生産物を金額表示したもの」として算出されます。期間は1年間で、ドル建て表記するのが一般的です。
これがどういう意味なのかは次の章で見ていくとしましょう。

ひとまず、「1年でどれだけ商品が作られたのか、商品の値段の合計で評価しよう!」って考え方だと思ってください。世の中色んな種類の商品があるので、車が何台作られた、本が何冊刷られただと結局どれだけ作られたのか分かりにくいですからね。

GDPを測ることで、それぞれの国がどれだけ経済活動=物を作ったのかを知ることができます。いっぱい物が作られているのであれば、それだけ需要があったということです。
つまり、お金を使おうという機運が高く、国の経済が元気かどうかを測ることができるのです。

こうした意味合いで、GDPが高いと良いとか、この国のGDPが伸びてきているぞ!、近年GDPの低下が見られるなあという議論が生まれてくるわけです。

GDPの算出方法

では、どのようにしてGDPを求めるのでしょうか?
実はGDOPは3つの方法で求めることができ、もし測定ミス等がなければ最終的に3つとも同じ額になることが知られています。

それぞれの算出方法を見ていく前に、共通する概念を先に確認しておきましょう。

先ほどGDPは「一定期間内に国内で出た最終生産物を金額表示したもの」と紹介しました。
ここでいう「最終生産物」とは何なのでしょうか?

例えば車を作りたいと考えたとします。車はそこからさらに加工して新しい商品になることはなく、物の最終形態ですよね。こういった「それ以上加工せず販売されるもの」を最終生産物と呼びます。

では、車を作る際に必要な部品はどうなのでしょうか?エンジンを生産したり、扉を生産したり、扉を作るために窓を作ったり、と様々な生産工程を経て車はできています。
こうした部品・生産工程で利用されるものは「中間財」と呼ばれます。

GDPの定義に立ち返ると「部品などの中間財は計算に入れず、車のような最終生産物のみを計算に入れようね」と言っているわけです。
その理由としては二重計上を避けるためです。車を売るとなったら、もちろんその値段の中にエンジンの生産費用だとか窓の値段が含まれますよね。つまり、中間財も計算に入れてしまったら、その費用が何度も計算に入ってしまうのです。

支出に基づく算出方法

ここまで、最終生産物を見てきました。
では、1つずつ算出方法を見ていきましょう。1つ目は「支出」つまりどれだけ買われたかに基づく計算です。

式だけを書いてみると以下の通りです。
Cは消費、Iは投資、Gは政府支出、NXは純輸出を表しています。

$$ GDP = C + I + G + NX $$

それではこの式の意味を考えましょう。
ここではCにもちろん中間財は含まれず、最終生産物を表します。\( C \)は数とその値段を掛け合わせたもの(つまり最終生産物ごとの買われた額)を足し合わせていった物です。

何も、商品は現物だけでなく、投資だって立派な商品です。そのため、GDPでは投資にどれだけお金が使われたのかも計算に入れられます。それが\( I \)です。

そして、物を買ったりサービスを利用するのは企業や個人だけではありません。政府だってするわけです。これが\( G \)になります。

また、鎖国しているわけでないので、日々海外と物の売り買いを行っています。そこで、どれだけ海外から買われたのかを考える必要があります。一方で日本から海外の商品も買っているわけですよね。なので、\( 輸出額-輸入額 \)によって求められる純輸出というものをここでは利用します。
それが\( NX \)です。

こうした「使った額」を足し合わせていくのが支出から見た計算方法です。

投資を入れて議論すると少しややこしくなってしまうので、ここでは一旦 \( I = 0 \)を仮定しておきましょうか。

$$ GDP = C + G + NX $$

付加価値に基づく算出方法

2つ目は付加価値に着目した方法です。

先ほど確認したように、物を生産するにはいくつもの中間財を必要としており、それらを組み合わせて生産が行われているわけです。

これを1つの商品の値段に注目して分解してみましょう。

商品は利益を得るために売っているのですから、作るのにかかった値段に+αした価格で販売を行います。「材料を組みわせて新しいものを作った」その事実に対して+αが付くのですから、この価値のことを「付加価値」と呼びます。

そして、それぞれの中間財についても同様のことが言えます。扉を作るのには金属が必要だし、ガラスが必要です。これらを組み合わせて付加価値がついたのが扉です。

このように分解していくと、商品の価格というものは「誰かの付加価値」の合計として表すことができるのです。
つまり、\( C\)は付加価値の合計と一致するわけですね。

\( G \)については「政府によって提供されるサービス」と理解します。政府がサービスという様々な付加価値を国民に提供しています。そして、サービスを提供するには都度お金がかかり、それが\( G \)に一致します。

\( NX \)についてはご想像通り、海外とお金のやり取りをして、自国で生まれた付加価値として理解すれば良いですね!

所得に基づく算出方法

では3つ目を見ていきましょう。
3つ目は「所得」から見た考え方です。所得とはもちろん「利益」のことです。

例えば、リンゴジュースを150円で売っているとしましょう。材料はリンゴだけで作るのに80円ぶんリンゴを使います。そしてリンゴを絞る人の人件費は20円です。

この時、リンゴジュースが売れるたびに50円の利益が出ます。そして、リンゴ農家はリンゴを1から作るので80円の利益が出ます。そして、絞っている人は20円のお給料がもらえるわけです。

このように分解していくと、「すべての商品の値段は誰かの利益」と言い換えられるのではないでしょうか?

政府の支出についても考えておきましょう。政府の支出は商品の購入やサービスの購入といった形で企業へと入っていきます。そのため、先ほどの計算の中に含まれていくわけです。
一部、補助金などがありますが、これらについても同様に企業や個人の利益になっています。

こうした国内での利益を主計して合計したものを「国内総所得(GDI)」といいます。
先ほどまでの\( C, G \)を利益にバラして足して行ったものがGDIということです。

さらに、利益を得るのは国内からのみではありません。海外との貿易があります。貿易によって国内に入ってくるお金は、誰かの利益となります。それを踏まえたものが「国民総所得(GNI)」と呼ばれる物です。

このことから、GDPとGNIが同じことを表していることがわかり、GNIを測ることでGDPが算出できるというわけです。

三面等価の原則

以上、3つの算出方法を紹介しました。どれも求め方や分解の仕方が異なりますが、最終的には同じ値をしましています。

これを「三面等価」と呼びます。

昨今は電子通貨だとか、国内外の貿易が盛んだったりだとか、様々複雑化しているので上記に説明した通りの数式では説明しきれない部分はあります。そうであっても値は一致します。

しかし、原則的にはこの3方式が存在し、それぞれ同じ値なのだと理解しておいてもらえればと思います。

GDPの種類

これまで一口にGDPといってきましたが、実はGDPにはいくつか種類があります。

これらの違いによってグラフや表が示すことも変わってきますので、ぜひ理解していってください。

名目GDP

これはGDPを計算する際の価格を、計算時の商品価格で考える方法です。単純に数×価格をして求めるだけです。

ぱっと見で算出できるため取り回しの良さがありますが、インフレやデフレによってGDPが上がっているのか、単純に経済が回っているのかが捉えきれないという側面があります。

つまり、名目GDPが伸びても価格が上がったのが原因か、いっぱい売れたのが原因かわからないということです。

実質GDP

そんな中で生まれたのが「実質」という概念です。これは経済学で頻出の概念なので覚えておいて損はありません!

これは、物価の変動と、貨幣の価値を考えて算出するものになります。
どこか1つの年を基準年に決めてその時点での価格を使って計算するのです。

例えば、2000年を基準として、リンゴジュースの価格が100円だったとしましょう。そして2023年では150円に値上げしていたとします。また、2023年では500個売れました。
本当はいっぱい商品があるべきなのですが、面倒なのでこの国ではリンゴジュースしか生産物がありません。

この時、名目GDPは\( 150 \times 500 = 75000 \)円になります。
一方、実質GDPは2000年の価格を基準として用いるので \(100 \times 500 = 50000 \)となるわけです。

名目で見るのか、実質で見るのかによって結構違いますよね。ちなみに、今回は2000年と2023年という23年も期間が空いていたことで1.5倍の価格になってしまっていますが、連鎖ウェイトという物を使ってこのインパクトを軽減させる方法などもあります。
この辺に興味を持たれたらぜひ調べてみてください!

GDPの利点

ではGDPを計算することで何が嬉しいのでしょうか。

これは、これまでに触れてきた通り、国の経済がよく回っているのか、つまり国の経済が健康的かを評価することができるからです。

そして、GDPを使うことによって、物価の水準がどう変化しているのかを測ることができます。
ここではどのように物価水準を測るのか簡単にみていきましょう。

上で見たように、名目GDPと実質GDPでは物価の上昇によって大きく値が変わってきます。それを利用するのです。
この方法をGDPデフレータと言います。

$$ GDPデフレータ = \frac{名目GDP} {実質GDP} \times 100 $$

計算式は上の通りです。先ほどのリンゴの例を使って見てみましょう。

$$ GDPデフレータ = \frac {75000} {50000} \times 100 = 150

となり、物価が基準年から1.5倍になっていると言えます。実際、100円から150円の1.5倍になっていますね。1つの商品だけであればパッと物価が測れるのですが、世の中には計り知れない量の財があるので、こうやって求めるのです。

GDPの限界

では、GDPだけ測ることができればその国の経済状況を把握しきれていると言えるのでしょうか?

確かに国全体でお金が回っているのかを捉えることはできます。しかし、だからと言って国民全員が裕福か、お金を使っているかはまた別の話です。

数人の超裕福な人がいて、その人たちがすごくお金を使っているから豊かに見えているだけで、他の人はギリギリの生活かもしれないのです。

もしGDPだけで経済を測ってしまっては、こうした貧富の差などを取りこぼしてしまいます。

その他にも、経済だけを考えてどんどん生産、そのために工場増設、だけをしていれば良いのでしょうか。GDPだけで経済を測ってしまうとこれが是とされてしまいます。極端な話、GDPだけ見ていると環境が破壊される可能性もあるのです。

しかし、昨今SDGsが叫ばれているように環境への配慮は長期的な目線でも必要不可欠です。

まとめ

GDPは様々な方法によって求められる、経済指標の1つです。
これを用いることで、経済がよく回っているのか健康的かを捉えることができます。

また、名目GDP実質GDPを組み合わせることによってGDPデフレータを算出することができ、物価水準の変動を知ることもできます。

しかし、GDPだけでその国の経済状況を知り尽くすことはできません。
そのため、マクロ経済学の世界では様々な経済指標が生み出されており、各国はそれに基づいて算出していきます。

そして、出てきた結果と社会を鑑みて公共政策や財政政策などに踏み切るのです。

GDPをきっかけとして、現在の日本社会、世界情勢がどうなっているのかを考えるきっかけにしてもらえたら嬉しい限りです。

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