コンコルドの誤謬とは – サンクコストへの固執

行動経済学
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みなさんは「コンコルドの誤謬」という言葉を聞いたことがありますか?「コンコルド効果」や「コンコルドの誤り」「サンクコスト効果」と呼ばれることもあります。

より身近な言葉では「サンクコスト」なら聞いたことがあるのではないのでしょうか?経営をされている方や経済学を勉強している人にとっては当たり前の言葉ですかね。

このサンクコストによって踊らされることが「コンコルドの誤謬」です。
今回は、サンクコストとは何かから始まり、コンコルドの誤謬のご紹介をしていきたいと思います。

僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。

サンクコストとは

では、まず初めに「サンクコスト」について見ていきましょう。サンクコストとは英語で書くとsunk costであり、「埋没した費用」という意味になります。

埋没とあるように埋まってしまったコストであり、回収できない費用を表します。ここで回収できないというのは、絶対に支払いが発生する費用のことで、売却できないものと捉えていただくのが良いでしょう。

端的にいうと「投資から撤退しても回収できない費用」です。

例えば、ある会社新たに服を生産することとします。服を大量生産するためには工場が必要になります。そこで、工場を1つ作ったとしましょう。すると、工場を建てるために建設費がかかります。

しかし工場を建てたけれども全然服が売れないとしましょう。工場を建てるのとその他設備、そして服の材料費でかなりの損失が出てしまっています。

工場自体を売却すれば、ある程度の費用は回収できます。しかし、売却時に発生する収益よりも建設費の方が高く、必ずある程度の損失が発生します。
この差を「サンクコスト」と捉えることができます。

コンコルドの事件

ここまで服の工場の例を見てきました。先の例では、損失が出たからということで工場の売却をする場合を見てきました。

ここで、売却しなかったらどうでしょうか。もしかしたら服が突然バズって売れ始めるかもしれません。そうしたら、サンクコスト分の損失よりも多くの利益を得られるかもしれません。

じゃあ工場を売却しない方が良いのではないでしょうか?しかし、売らなければ売らないで、常に工場や設備の維持費がかかってきてしまいます。つまり、売らなければより多くの損失が膨らんでくるかもしれません

この損切りのタイミングが難しいわけです。そして、これを大きく見誤ったのがコンコルドについての事件です、、、。

1970年頃、世界各国は旅客機の開発を進めていました。そして、フランスとイギリスも共同して「コンコルド」という超音速旅客機の開発を進めようとしていました。超音速というだけあってマッハ2を超える速度を記録したとされています。

現在そのようなスピードの旅客機がないことからもわかるように、この開発には大きな問題がありました。
まず、マッハ2を出すためには機体が軽い必要があり、定員数かなり少なく設定されていました。さらに、そのような速度を出すにはかなりのエネルギーが必要とされ、燃費が非常に悪かったようです。そのため、開発段階から採算を採れないことが判明していました。

しかし、開発にあたって4000億もの研究開発費がかかってしまっています。本来ならば開発費を諦めてここでプロジェクトを諦めるべきです。どうせ採算は採れないのですから。

しかし、サンクコストがかなりあったことから、プロジェクトは継続されることとなりました。そして実際就航することとなりました。しかし、舞台は1970年代。そう、オイルショックです。エネルギー費が高騰し、さらに環境への問題意識の高まりに煽りを受け、最終的には数兆もの損失を残し、この会社は倒産に陥ってしまいました。

もし採算が採れない時点で損切りをしてプロジェクトをやめておけば、損失は4000億円で済みました。しかし、やめなかったことで数兆もの損失に膨らんでしまったのです。

コンコルドの誤謬とは

コンコルドの誤謬とは、この出来事を反面教師として名付けられた認知バイアスの1つです。「損失が出ると分かっていてもこれまでの投資を惜しんで、投資を続けてしまうこと」を表します。

まさしく、サンクコストの説明で見た服の工場の例です。もはや損失が出るのが目に見えているにもかかわらず、一縷の希望にかけて投資を続けてしまうのです。そしてさらに損失が嵩み、更に抜け出せなくなってしまうのです。

ここまで、コンコルドの事件とコンコルドの誤謬についてご紹介しました。では、身近のどのような場面で見られるのでしょうか?
卑近な例としてはよくギャンブル課金ゲームが挙げられます。

ギャンブルで一度損失を出してしまったとしましょう。ここでやめてしまえば損失はそれで済みます。しかし、人間誰しも「次で取り返せるかもしれない」という心理が働くのではないでしょうか?そしてもう一戦、もう一戦と続けていき、損失が嵩んでいきます。

課金ゲームについても見ていきましょう。あるゲームに一時期ハマり、数万円課金してしまいました。しかし、途中でそのゲームに飽きてきたとしましょう。すると、お金をかなり払ってしまったという投資と、それまで進めるのにかなり時間をかけてしまったなという思いが心に残るわけです。
そしてずるずると続けてしまい、楽しく思えなくても時間を浪費してしまう、、、。

最近の例

そしてもう1つ、最近(数年前)あった大きな例を見ておきましょう。みなさんご存知、東京オリンピックです。2020年、コロナ禍が始まりオリンピックをしている場合ではない状況となりました。そして2021年へと延期することが決められました。1年で収束することを期待していたのです。

そして2021年、コロナ禍の収束の兆しはなく、世論ではオリンピックの中止が求められていました。しかし、オリンピックの開催に向けて当初の試算投資額7340億円から倍近くの1兆4238億円もの投資費用がかかっています。

この莫大な費用がサンクコストとしてかかっており、ここで中止してしまうととんでもない損失が出てしまいます。そこで、政府はコンコルドの誤謬によって中止判断を下すことができなかったとも言われております。

実際盛り上がった部分もあったので、是非は難しい問題ではありますが、、、。

まとめ

ここまでサンクコストから始まりコンコルドの誤謬について見てきました。コンコルドの誤謬とは「損失が出ると分かっていてもこれまでの投資を惜しんで、投資を続けてしまうこと」です。

多くの人が投資に後髪を引かれて更に損失を重ねてしまっているのです。他の行動経済学の理論はプロスペクト理論のように人間の行動を理論化したものが想像されます。これについては少し毛色が異なり「教訓」めいた理論と言えるのではないでしょうか。

では、どうしてこの誤謬を乗り越えるのか。よく挙げられるのが「ゼロベース志向」などと言われるものです。これは現状の損失を一回忘れて現時点から物事を捉え直す、というものです。プロスペクト理論でいうところの、参照点に立ち返るといった感じでしょうか。そうすることで、正確に現状を評価することができるようになります。

しかし、実際は難しいものですよね、、、。もう1つ挙げられるものとしてはあらかじめ損切り点を算出しておき、それを超える損失が出ると撤退するというものです。これについてはミクロ経済学を勉強している人や金融を勉強している人にとっては馴染み深いものでしょう。

以上、教訓めいたコンコルドの誤謬の話でした。どうやって陥らないようにするのか、克服方法も踏まえて理解しておくのがよさそうですね!

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