行動経済学の巨星:リチャード・セイラーの軌跡と遺産

行動経済学
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前回、行動経済学の研究者紹介の第一弾として、ダニエル・カーネマンについて紹介しました。

今回は、もう1人の行動経済学の巨星、リチャード・セイラー教授について紹介します!
彼も行動経済学を語る上で欠かすことのできない存在で、ノーベル経済学賞を受賞するなど、現在の行動経済学の体系に大きく影響を及ぼしています。

僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。

リチャード・セイラーの基本情報

まずは、彼の歩んできた経歴を振り返りましょう。

1945年アメリカのニュージャージー州で生まれ、1974年にニューヨーク州にあるロチェスター大学にて経済学の博士号を取得します。

その後、同大学にて准教授の座に就き、1995年よりシカゴ大学の教授に着任します。
彼の研究分野は行動科学ミクロ経済学です。

2017年にはノーベル経済学賞を受賞しています。

主要な業績

では、彼の業績はどのような点にあるのでしょうか?

彼の功績は、心理学的要素を伝統的経済学に持ち込み、行動経済学の役割を発展させた点にあるのではないでしょうか。

伝統的経済学では全ての人は「合理的」であるという「経済人」という仮定のもとに成り立っています。
この仮定は、人間は皆「利己的」で「瞬時に正確に計算できて」、、、というようなとんでも仮定になっています。

実際の人間はより「直感的」で経済学的には「非合理的」です。
こうした点について、「非合理的だ!」と切り捨てるのではなく、「人間としては合理的だ」と捉えて科学するのが行動経済学です。

これまではその合理性の探究が行動経済学の中心的な考え方でした。
しかし、セイラー教授はそこから一歩進んで、「人間らしい合理性は損していることがあるのだから、是正することはできないか」などの考えに至ったのです。

それこそが「ナッジ」と呼ばれるもので、昨今ビジネスの場でも注目されている理論です。

これによって、単なる行動科学から「ビジネス機会」や「社会厚生の向上」的側面が行動経済学に与えられることになったのです。

その結果として、2017年にノーベル経済学賞を受賞します。
それが皮切りとなって行動経済学の知名度が急上昇し、世間に広まったのです。

僕たちが「行動経済学」や「ナッジ」という言葉を見聞きしたことがあるのは、彼の功績と言って過言ではないのではないでしょうか。

また、ナッジが行動経済学として主要な研究分野に発展するにつれて、経済思想的側面についての議論も活発化します。
ざっくりというと、「ナッジで人の行動を操るのって、倫理的・経済学や政府などの役割としてどうなの?」という話です。

リバタリアン・パターナリズム」という思想の名前で議論が行われています。

代表的な著書

リチャード・セイラー教授は行動経済学人気の火付け役だけあって、複数の著書が出版されています。

NUDGE

まずは「ナッジ」です。ここからナッジのきっかけの本ですからナッジを語るには必読です。
卑近な出来事に潜む不合理を指摘し、それを改善するにはどのようなナッジがあるのかを示唆してくれています。

正直、行動経済学を勉強する上でこれを読んでいないのは有り得ないです。
セイラー教授についてよく知る上でも、彼の代表著書であるこちらは読まない手がないと思います。

セイラー教授の行動経済学入門

続いては「セイラー教授の行動経済学入門」です。
「合理性とは何なのか」という行動経済学の核となる思想から始まり、様々な身近な出来事を行動経済学の視点から見つめていきます。

Amazonのレビュー等を見てみると、難解で入門ではないという意見が散見されました。
個人的にはそのような感想を持つことはなく、さらっと読めた印象でした。

下の記事でも述べていることなのですが、行動経済学を学ぶ際は「自分だったらどうするか」「論理的・合理的に考えたらどんな結果がベストか」を意識して読み進めるのが良いと思います。
行動経済学を学ぶ上での「入門」すなわちスタートはこの「違い」を理解する点に詰まっているのです。

行動経済学の逆襲

こちらもセイラー教授の本でかなり有名なものです。
皆さんも本屋で並んでいるのを見たことがあるかもしれません。

彼の経歴になぞらえながら、行動経済学の研究について学ぶことができます。
行動経済学は経済学の基礎であった「経済人」の仮定に真正面から立ち向かった「異端」の学問です。そのため、多くの経済学者からの批判を受けつつ発展してきた過去があります。

セイラー教授と行動経済学の伝統的経済学に対する「逆襲」を味わうことができ、行動経済学の台頭をよく知ることができる一冊だと考えています。

実践 行動経済学

最後にもう1冊有名な本の紹介です。

こちらはもう1人の行動経済学の立役者キャス・サンスティーン教授との共著です。
正直この時点で読むべき本だと思います笑

この本も卑近な例に触れながら、行動経済学的視点やナッジを学ぶことができます。
更に、個人的おすすめポイントは「リバタリアン・パターナリズム」に触れていることです。

リバタリアン・パターナリズムは行動経済学を学ぶ上で重要な思想なのですが、触れられていないことが多く、日本では中々認知されていない思想だと思います。

この本は序盤でその役割を解説してくれているので、少しでも行動経済学を「正しく」知るにはもってこいだと思います!

リチャード・セイラーの著書まとめ

現在の行動経済学への影響

上でも述べたように、現在への影響としては「ナッジ」がやはり大きいでしょう。
これによって行動経済学の門戸は経済学のみから、ビジネスなどの場へと展開されていきました。

また、ナッジの役割は経済・経営の側面のみではなく、健康に関する分野へも広がりを見せ「行動健康経済学」などの分野まで生まれてきています。

まとめ

今回は行動経済学人気の火付け役であるリチャード・セイラー教授について紹介しました。

現在の経済学を学ぶ上では押さえなければならない人物の1人であり、彼のおかげで「ナッジ」などの理論があるのです。

ぜひ、彼の著書や、行動経済学の教科書などを通して、奥深くて面白い行動経済学の世界を堪能していただければ幸いです!

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