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今回は行動経済学を学ぶ上で、必ず読んでほしい一冊をご紹介します。
行動経済学を初めて学ぶ人にも、少し触れたことがある人にもおすすめの本です。
この本の特徴は、世の中に潜む様々な不合理を取り上げ、人間がいかに「合理的ではないか」を示している点です。合理的ではない、と言われてしまうと何だかマイナスに感じてしまいます。
しかし、この本の面白いところは「合理的ではないからこそうまくいく」という不合理の役立ちに主眼を置いている点です。
行動経済学は「経済学の考える合理性から人間はこんなに乖離しているよ」ということを示す学問です。基本的にはその乖離の善悪はなく、「じゃあ理論を修正しないとね」としかならないのです。
ナッジという考えは「不合理で損しているから修正しよう」という考えで、行動経済学から生まれたお話です。こちらは聞いたこともあるのではないでしょうか?
行動経済学を取り巻くお話は大体この理論かナッジが多いのではないでしょうか。
しかし、この本は「不合理も役立つよね」という善の側面に焦点を当てている、稀有な例と言えるでしょう。
僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。
本の詳細
不合理だからすべてがうまくいく – 行動経済学で「人を動かす」
(The Upside of Irrationality)
著者:ダン・アリエリー
訳:櫻井祐子
出版社:早川書房
2010年11月25日発売
おすすめしたい人
この本は行動経済学を初めて学ぶ人、ある程度学んだことのある人両方におすすめです。
行動経済学を初めて学ぶ人は「行動経済学入門」みたいな本や行動経済学の教科書などから入らない方が良いのではと僕は考えています。これらからスタートしてしまうと、理論ありきの行動経済学となってしまい、本来あるべき「人間らしさの観測」という観点が抜け落ちてしまう可能性があります。
この本は仕事などの社会や生活の中など卑近な出来事に焦点を当てています。理論ではありません。これによって、「ああ、こんなところに不合理なことがあるんだ」と行動経済学を身近に感じることができます。
これこそが行動経済学の初めに学ぶべきことでしょう。これをすることによって行動経済学がグッとわかりやすく感じます。
こういった意味で、初めて学ぶ人にこそ手にとってほしいと思います。
初学者には、この本の前作に当たるこちらの本もおすすめです。まさしく行動経済学の火付け役となった本であり、原点になるような本です。
こちらは「役に立つ」ではなく、純粋に「身近にはこんな不合理があるんだなあ」と知っていただけると思います。
こちらも身近な例を紹介する物語のような本なので併せて読むのをおすすめします。
一方で、行動経済学をある程度学んでいる人は「でどうナッジするの?」といった方向へ思考が向かいがちです。そうでなくとも、これはどういう理論の話なの?となってしまいます。
つまり、理論やナッジが思考を先行していて、行動経済学自体を正しく見られなくなっているのです。
そういった人たちにとっても「原点に立ち返る」「視点を広げる」という意味で大いに役立つのではないかと考えます。
僕自身、行動経済学について研究する際に「こういう理論をやりたいな」という思いが先行しており、なかなか進まなかった経験があります。そんな時に教授にこれら2冊に立ち返るように促され、身近な不合理を見つめ直すことで、やりたい研究ができるようになりました。
本の構成
本の構成は基本的に、身近な不合理を紹介していく形になっています。
そして、その不合理があるからこそ、どのように我々の生活が成り立っているのかを見ていくことになります。
前半では「仕事」など「社会生活」における不合理に焦点を当てた内容になっています。そして、後半では「日常生活」に焦点が当てられています。
こうした様々な側面から日常に潜む不合理が明らかにされていくことでしょう。
中々経験することはありませんが、ダン・アリエリー自身が大火傷を負った話なども見ものです。
まとめ
今回は「不合理だからすべてがうまくいく – 行動経済学で「人を動かす」」をご紹介しました。
この本は行動経済学を初めて学ぶ人、ある程度学んだことのある人両方におすすめです。
身近な例から行動経済学に入っていく物語であるからこそ、初めての人にとってはとっつきやすく、行動経済学のあるべき姿を味わえます。
学んだことがある人には凝り固まった視点をほぐし、原点に立ち返る機会になるでしょう。
こうした物語調で、身近な例から学んでいく本は他にもあります。以下の記事でいくつかおすすめを取り上げているので、併せてお読みください!