実質賃金とは – 実質と名目の違い

マクロ経済学
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先日、実質賃金が20ヶ月連続で下がっているというニュースがありました。
最近は賃上げが叫ばれていて、電気連合などはベアを1.3万円以上求める方針などとも報じられています。

社会潮流的には賃金を上げようとしているのに、20ヶ月連続の減少とはどういうことなのか、、、。
今回は、経済学だけでなく社会でも重要な「実質」と「名目」という概念について紹介します。

僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。

名目とは

まずは、直感的に分かりやすい「名目」について見ていきましょう。
ここでは、賃金を例に取って見ていきます。ちなみに、「名目」とついていたらどれも同じ考え方になります。

昨年の給料が20万円だったとしましょう。そして、賃上げが行われて今年の給料は25万円にアップしました。

この20万円や25万円が「名目賃金」です。
単純に、2つの時点の賃金を額面表したのが名目賃金です。

名目賃金とは、額面通りの賃金、つまり今年を見ると25万円ということになります。

名目賃金 = 賃金を額面で表したもの

では、名目賃金の上昇を見てあげると、単純計算で25%のアップということになります。

名目賃金だけ見てあげると、ぱっと見で給料が上がって見えるので幸せです。
しかし、世の中では実質賃金というものが重要になってきます。

実質とは

では、「実質」とは何なのでしょうか?
端的に言ってしまうと、額面ではなく買える物の個数で評価する表す方法です。

先ほどと同じく、去年は20万円、今年は25万円の賃金を得ているとしましょう。
そして、昨年の商品Aの価格は1000円だったのに対し、今年は1250円になったとしましょう。

この時、去年は給料を全て商品Aに使ったならば200個買うことができました。一方、今年について見てみても\(250000 \div 1250 = 200 \)個となります。
これが実質でみた賃金になります。

実質賃金 = 額面ではなく、物の数(貨幣の持つ価値)で表したもの

給料が上がったのに、実は買える物の数は変わらない、そのような場合があるのです。実質では給料が増えていないということです。
このように、賃金の上昇は単に上昇しただけなのか、物価が上がったから併せて上昇したのか、場合が変わってくるわけです。

ここで、去年の実質賃金を\(p_0\)今年の実質賃金を\( p_1\)としましょう。
例えば、\(p_0 < p_1\)となっていれば、実質賃金が増えているということです。

$$ p_0 < p_1 \to 実質賃金の上昇 \\ p_0 = p_1 \to 実質賃金の維持 \\ p_0 > p_1 \to 実質賃金の減少 $$

今回は、簡単にするために商品Aのみを仮定しました。しかし世の中には沢山の商品が存在するわけです。
そのため、政府は消費者物価指数デフレーターなどの指標を用いて計算を行っています。
※デフレーター等で評価した後の単位は日本の場合「円」になります。

今の日本の実質賃金

日本は現在、賃上げを進めようとしています。
つまり、少なくとも名目賃金上昇の圧力が存在しているわけです。

しかし、それを上回る勢いで物価の上昇が進んでいるのです。そのせいで、\(p_0 > p_1\)つまり実質賃金の減少が進んでいます。
これが意味することは、「今までほどものが買えなくなる」ということです。

現在、それが20ヶ月連続で起こってしまっているのです。

まとめ

今回は昨今の経済状況を踏まえて実質賃金について紹介しました。
20ヶ月連続マイナスになっていることの問題を理解していただけたでしょうか?

今回はわかりやすさを優先して簡単に紹介しましたが、より深く理解したい方はマクロ経済学を少し勉強してみてください!
その周囲の理論や社会情勢をより深く理解できるはずです!

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