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「値上げって、結局どれくらい買う人が減るの?」「安くしたら、みんなもっと買ってくれるのでは?」
コンビニでお菓子の価格が数十円上がっていたときや、アプリのサブスク料金が値上がりしたとき、そんなふうに考えたことはありませんか?
こうした疑問は、ミクロ経済学の中でもとても大切なテーマ、「価格弾力性(Price Elasticity)」という考え方で説明することができます。
これは、前回までに学んだ「需要曲線」や「限界効用」の理解をもとに、さらに一歩進んだ概念です
今回は、商品やサービスの価格が変わったときに、需要(=買いたい人の数)がどう変わるのか、そしてそれが売上にどうつながるのかを、身近な例を使いながら解説していきます。
僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。
価格弾力性とは何か?
「価格弾力性」とは、価格が変わったときに、需要量がどのくらい変化するかを表す経済学の指標です。
たとえば、映画のチケットが 1,800円から 2,000円に値上げされたとき、来場者が減ったとしたら、それは「価格に対して需要が反応した」ということになります。
式で表すと以下になります。
$$ 価格弾力性= \frac {需要変化率} {価格変化率} $$
たとえば、あるお菓子の値段が 10% 上がったときに、購入数が 20% 減ったなら、\( \frac{−20%}{+10%} = −2 \)となります。
この「-2」は価格弾力性の値で、絶対値が 1 より大きいと「価格に敏感(=弾力的)」、1 未満なら「価格に鈍感(=非弾力的)」と呼びます。
つまり、「価格が上がったらどれくらい人は買わなくなるのか?」という感覚を、数値で表しているものなんです。
価格が変わると売上はどうなる?
ここで気になるのが、「じゃあ価格を上げたら、売上はどうなるのか?」という点です。
売上は、「価格 × 数量」で求められますよね。
でも、価格を上げると数量が減る。逆に、価格を下げると数量は増える。では、そのバランスはどこにあるのか?
パン屋を例として考えてみましょう。
例えば、今まで150円で1日100個売っていたとすれば、売上は15,000円となります。
ここから、180円に値上げしたとしましょう。
その場合、80個しか売れなかったら売上は14,400円となります。
このように、価格を上げたけど買う人が減りすぎて、売上が下がってしまうこともあります。
しかし、額に160円にしたけど95個売れた場合15,200円の売り上げとなります。
このように、「買う人が少ししか減らなければ」、価格を上げても売上は増えるわけです。
つまり、価格を上げたときに売上がどうなるかは、「どれだけ人が買わなくなるか」によって決まります。
それを見極めるための道具が、価格弾力性というわけです。
価格に敏感な商品・そうでない商品
では、どんな商品が価格に敏感で、どんな商品があまり影響を受けないのでしょうか?
◎価格に敏感(弾力的)な商品
- お菓子やジュースなどの嗜好品
- スマホケースなど代替品が多いもの
- 通信プランやアプリのサブスクなど、比較しやすいサービス
たとえば、メロンソーダが150円から180円に値上がりしたら、「じゃあ今日は買わなくていいか」となりがちです。
◎価格に鈍感(非弾力的)な商品
- 通学の定期券や水道、電気などの生活必需品
- 慣れている銘柄の日用品(例:毎回同じ歯磨き粉)
たとえば、通学の電車賃が10円上がったからといって、歩いて大学に行く人はほとんどいません。
このように、必要だから買わざるを得ないものは、価格が上がっても需要は大きく減らないのです。
これまでの内容とどうつながるのか?
ここまで読んできて、「あれ、これって以前やった需要曲線や限界効用と似てない?」と感じた人もいるかもしれません。
その通りです。
需要曲線は、「価格が下がれば需要が増える」という関係をグラフで表すものでした。
価格弾力性は、その「どれくらい増えるのか」を数値で表すもの、と考えるとわかりやすいです。
さらに、「限界効用」が急に減っていく商品は、消費者が「それ以上買わなくてもいい」と感じやすくなるため、価格にも敏感=弾力性が高くなりがちです。
まとめ
価格弾力性は、日常の「なんでこれ値上がりしたの?」という疑問を、論理的に説明できる便利な考え方です。
また、「売上は価格を上げれば上がるわけではない」という、経済のリアルな一面を知ることにもつながります。
今後は、供給の弾力性や、市場の構造(独占・競争など)によって、価格や取引量がどう変わるのかも学んでいきます。
それらを通じて、「価格はどう決まっているのか?」「なぜ値上げやセールが行われるのか?」といった問いへの理解がさらに深まっていきます。