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「今年も大手企業がベースアップを実施!」というニュースが並ぶ春。
賃上げは労働者にとって朗報のはずなのに、実感として「手取りが増えない」「むしろ生活が苦しい」という声も多く聞かれます。いったいなぜ、こんな“ねじれ”が起こるのでしょうか?
この記事では、2025年の春闘を切り口に、「賃上げの背景」「実質賃金との関係」「社会保険料の影響」等をわかりやすく解説します。
最後には、経済学の視点から見た今後の課題とヒントもご紹介します。
僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。
2025年春、なぜ賃上げが進んでいるのか?
今年の春闘では、多くの企業で賃上げ率が過去最高水準を記録しました。
2025年度は平均5.46%上がる予定との試算も出ています。
では、なぜ春闘で賃上げをするのでしょうか?背景には以下のような要因があります。
- 人手不足
- コロナ禍後の経済回復とともに人材確保競争が激化
- 物価上昇への対応
- 生活コストが上がる中で、企業も賃上げを通じた対策を迫られている
- 政府の要請
- 「持続的な賃上げ」を政策目標に掲げ、企業への圧力も強まっている
とはいえ、実際に賃上げを実感できているかというと、多くの人は疑問を抱いています。
その背景には「名目」と「実質」の違い、また政策の影響があります。
名目賃金と実質賃金の違いとは?
「賃上げ」は通常、名目賃金(額面)の上昇を意味します。
しかし、物価がそれ以上に上がっていれば、実質的な購買力は低下してしまいます。
たとえば、昨年の手取りが30万円、物価指数が100だったとします。
そして、今年の手取りが31万円だったとして、物価指数が105だとします。
この場合、名目では(31-30)÷30×100で3.3%の増加となります。
しかし、実質で見てみるとマイナスになります。
詳しい計算方法については、こちらの記事を確認してください。
ここでのポイントは、賃金が増えたように見えても、それは名目上増えているだけで、必ずしも買えるものの量が増えるわけではない、ということです。
「手取りが増えない」本当の理由は社会保険料の増加?
もう一つ見逃せないのが、社会保険料の負担増です。
厚生年金・健康保険・介護保険等の保険料率は年々上昇しています。
賃上げ以上に保険料が引かれれば、手取りは減ってしまいます。
加えて、扶養の壁や103万・130万の制限の影響もあり、世帯単位で見ると賃上げが生活の改善につながらないケースも。
扶養の壁引き上げは最近の経済政策でもホットなトピックですね。
これは、賃金政策だけでなく、税・社会保障制度の改革がセットでなければ意味がないことを示しています。
労働市場と企業の思惑―経済学で読み解く「賃上げ」
ミクロ経済学の視点で見ると、賃上げは労働市場の「供給不足」や「交渉力強化」が原因で起こる現象です。
企業は利益とのバランスを見ながら賃金を調整します。しかし、インフレ時には企業も苦しくなるため、賃上げが遅れがちです。
また、社会保険料や税制が労働供給に影響を与えるという点では、公共経済学ともつながります。
将来的には、「労働市場」「税と政府の役割」などの観点からも深掘りしていきたいと思います。
まとめ―賃上げだけでは「生活向上」にならない時代へ
ここ数年、ようやく賃上げの動きが活発になってきています。
しかし、物価上昇や社会保険料の負担によって、生活実感としての「豊かさ」はなかなか得られないのが現実です。
今後は、「名目の金額」だけでなく、実質的な購買力や、制度的な負担の構造にも目を向けることが重要になります。