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はじめに ─ 消費税廃止論が再び注目される理由
2025年に入り、再び「消費税廃止論」が注目を集めています。きっかけの一つは、アメリカで再浮上したトランプ前大統領による「中国製品への追加関税」方針の報道です。これがグローバルな物価上昇懸念を引き起こし、世界中で「自国の物価高対策」が重要な政策課題になりつつあります。
日本でも、物価高に苦しむ声は根強く、SNSや一部の野党を中心に「消費税を一時的にでも廃止すべきではないか」という声が再び高まっています。本記事では、この「消費税廃止論」の背景と現実的な政策の選択肢について、経済学の視点を交えて解説していきます。
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僕は一橋大学大学院の経済学研究科で行動経済学について研究していました。経済学の面白さ、社会での有用性を広げるため、当ブログを開設しました。
このブログ(Economix)では経済学と大好きなガジェットを中心に情報発信しています。
消費税はなぜ「逆進的」なのか?
消費税は「すべての人に等しくかかる税金」です。一見公平に思えますが、所得の少ない人ほど負担が重く感じられるという特徴があります。これを経済学では「逆進性(regressivity)」と呼びます。
例えば、年収300万円の人と年収1000万円の人が消費税10%で、同じ5万円の商品を買ったとき、支払う消費税はどちらも5,000円です。しかし、年収に占める割合は前者の方がはるかに高くなります。このように、低所得者層にとって消費税は可処分所得を圧迫しやすい税なのです。
そのため、物価が上昇している今、「せめて消費税を軽減・撤廃すべきではないか?」という声が強まるのは自然なことでしょう。
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政治的な現実と制度的なハードル
ですとはいえ、消費税は日本の財政において重要な税収源でもあります。実際、2023年度の税収では全体の約3割が消費税です。
また、社会保障費の財源としての位置付けも強く、単純に廃止するのは財政的に非常に困難です。廃止するには他の税での穴埋めか、歳出削減といった調整が必要であり、政治的なハードルは非常に高いのが現実です。
そのため、現実的な対応策としては以下のような政策が議論されています:
- 消費税率の一時的な引き下げ(例えば8%→5%)
- マイナポイントなどの形での間接的支援
- 現金給付による所得補填(特に低所得世帯向け)
消費者支援の選択肢 ─ 減税 vs 給付、どちらが有効か?
では、実際にどの政策が「消費者の生活支援」として有効なのでしょうか。
政策名 | 即効性 | 持続性 | 逆進性への配慮 | 制度的ハードル |
消費税の一時減税 | 高い | 中程度 | 少ない | 高い |
マイナポイント再配布 | 中程度 | 低い | ある程度配慮あり | 低い |
現金給付(低所得層) | 高い | 低い | 高い | 中程度 |
過去の「現金給付」から得られた教訓
2020年のコロナ禍における一律10万円の特別定額給付金は、多くの人にとってありがたい支援でした。しかし、その多くが貯蓄に回ったという調査結果もあります。理由は「将来不安の高まり」であり、一時的な給付では消費意欲を喚起しにくいということが分かりました。
このことから、消費喚起を狙うのであれば、ポイント形式の給付(使用期限付き)や、消費税減税などの恒常的な可処分所得の引き上げといったアプローチの方が、より効果的に「消費者の財布の紐を緩める」可能性があります。
政策だけじゃない、消費者自身の工夫も
もちろん、物価高の中に対して個々の工夫次第で生活防衛を狙えます。例えば
- 買い物をまとめて節約する工夫
- キャッシュレス決済の活用(ポイント還元を狙う)
- 電気代の節約やエネルギー効率の良い家電の選定
といった対策も現実的です。省エネ家電や節電グッズ、スマート家計簿アプリなどの導入は、一時的なコストはかかっても長期的に節約につながる選択肢といえます。
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おわりに ─ 税・給付・行動経済を結ぶ視点でニュースを読む
経済政策は、単なる政治の話ではなく、私たちの日常に直結するテーマです。消費税減税か、現金給付か、マイナポイントか。その選択の裏側には、人々の行動・心理・経済合理性が深く関係しています。
特に「死課税」や「逆進性」など、経済学で用いられる概念を知っていると、なぜこの政策が賛成されるのか・反対されるのかを冷静に読み解くことができます。
今後の政策議論を見守る上でも、ニュースを「他人事」ではなく「自分事」として捉える視点が求められます。
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